上海の中国語学校では、講師レベルのアピールポイントとして、「対外漢語教師資格を持っている講師」と言うことがよくあります。

当センターでもこの資格を持った講師はおりますが、この「対外漢語教師資格」とは、一体どんな資格なのでしょうか?

「対外漢語教師資格」とは?

「対外漢語教師資格試験」(中国語:对外汉语教师资格考试)は、中国では最も古く、権威のある外国人向け中国語講師の資格でした。

この資格は中国教育部直属の国家漢語国際推広領導小組辨公室(国家漢辨)が主催していましたが、残念ながら、2005年を最後に停止され、未だに再開されてません。

もともと「対外漢語教師資格試験」は、国家漢辨が資格認証を通じて、外国人向け中国語講師のレベルアップを目的として作られました。しかしその効果はあまり見られないため、停止になりました。

「資格の無い講師がすでに第一線で活躍しており、中国語家庭教師も多いため、現実的に管理や検査もできない状況だったのも、漢辨が試験停止した理由の一つです」と上海言語委員会の張日培先生。

その後、試験を再開するという噂は何度も出ましたが、まだ実現してません。つまりこの資格を保持しているのは、2005年以前(今から12年以上前)に取得した人ばかりです。

「対外漢語教師資格」試験停止その後

2005年に「対外漢語教師資格」試験が停止後、2012年に国家漢辨と孔子学院総部は、標準化の一環として「国際漢語教師標準」を定め、その標準に沿った「国際漢語教師証書」試験を行っています。

試験は中国語教育基礎、中国語教育方法、教育組織と授業管理、中華文化と国際文化のコミュニケーション、職業道徳と専門発展などの五つの項目のテストで、受験生の能力を判断します。

この試験は孔子学院の中国語の正式教師とボランティア教師になるための、必要優先条件になっています。

また中国語国際教育や国内外の教育機関での採用や評価の根拠、国際中国語教育機関の講師のレベルと教える実力の参考にされています。

筆記試験は9月に行われ、面接試験は7月と12月に行われます。具体的な試験日や申し込み日は、以下の公式ホームページをご参考ください。

http://www.chineseteacher.org.cn

その他の外国人向け中国語講師の資格

他にも下記のような外国人向け中国語講師の資格があります。海外で中国語講師の採用の際など、多少の参考にはされますが、特に必須という訳でもありません。

【IPA国際注册对外漢語教師資格証】

「IPA国際注册对外漢語教師資格証」(International Profession Certification Association)はアメリカなど海外でも比較的認知度が高い中国語講師の資格です。略して「IPA教師資格証」とも呼ばれます。

IPA試験は通常、毎年の3月、6月、9月と12月に行われます。

【PAT対外漢語教師資格証】

IPAと同じく「中華人民共和国人材資源と社会保障部」の認証を得た資格で、上海(華東エリア)では「上海漢之音漢語学院」が試験を主催しています。

「IPA」の国際認証とアメリカでの認知度と比較して、PATは国家認証と生徒の評価を重視しています。試験も同じく、毎年の3月、6月、9月と12月に行われます。

まとめ

上記のように、「対外漢語教師資格」試験は、当初の目的の「資格取得を通じた講師のレベルアップ」の効果が見込まれなかったため、現在も停止しています。

その後の「国際漢語教師証書」は、国内の外国人向け中国語講師資格よりも、孔子学院などの中国政府関連の中国語教育機関が、海外での中国語講師を採用する際に必要な資格になっています。

「対外漢語教師資格」は、「全ての外国人向け」に、「中国語で中国語を教える」講師のための資格なので、特に日本人向けでなく、もちろん日本語で教えることができる資格でもありません。

資格を持っていても日本語ができない講師の場合、中国語だけのレッスンが可能な中級者以上なら大丈夫ですが、初心者の方にとっては、ちょっと厳しいかも知れません。

講師選択の際は、「対外漢語教師資格」などの資格の有無にとらわれず、ご自身のレベルに合った講師を選んだ方がいいかと思います。